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リビングに置いてあるソファーに腰を掛けると、その隣に彼女も腰を掛ける。
このタイミングで少し気になったことを質問してみることにした。
「何個か質問していいですか?」
「いいよ~なんでも答えるよ」
彼女はこちらを向きソファーの上で正座を始めた。
自分も体と顔だけを彼女の方に向ける。
「なんで死んだんですか?」
「う~ん秘密で!」
「えっ?なんでもって言ったじゃないですか」
「なんでもだけどこれはそのなんでもに含まれてないからだめ」
そんなん無茶苦茶だ、と思いながら次の質問を考えた。
「じゃあ名前はなんですか?」
「あやめ!綾取りの綾に愛してるの愛であやめ!よろしく!」
綾愛は手をこちらに差し出し握手を求めてくる。
手を握ろうとするがすり抜けてしまった。
「あ、私死んでるんだった」
綾愛は手を口の前に持っていき悪戯顔で笑っている。
「死んだことって忘れるんですか?」
「そうだね、あまりにも生きてる感がするんだ、私の心臓はまだ止まってないよ」
綾愛は胸に手を添えた。
「えっと、うーんじゃあ、幸せにしてくれるって言ってたんですけど、具体的に何を?・・・・」
「例えば君が困ったときとか、どうしようとか、嫌だぁ!って時に助言したりね、あとは・・・・」
それってただのアドバイスしてくれる人じゃないか。
「人を呪うことは?」
「できない!」
「飛んだりは?」
「できない!」
「すり抜けたり・・」
「それはできるよ!」
「物を動かしたり」
「できる・・・かも?」
綾愛は両手でテーブルを動かそうと試みるがすべてすり抜けてしまう。
「あれぇ?なんでだ?座れるのに・・」
確かに綾愛は座れている地面にちゃんと立っていた、足と尻だけは物を動かせるのか?
「足でテーブルを蹴ってみてくださいよ」
「え~やだよ~絶対痛いじゃん」
痛いのか?
「一回だけ!お願いします!」
「う~んまぁ、いいよ」
綾愛は立ち上がり右足を後ろに引き、狙いを定めている。
「いくよ~おらっ!」
足はすり抜け、バランスを崩し後ろに転倒してしまった。
急いでソファーから立ち上がり、綾愛のそばに駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
綾愛は目をつむりぐっと握った右手を上に突き上げた。
「生きてるよ、死んでるけど」
これは綾愛なりの面白い死んでるジョークなのだろう、面白くはないが。
綾愛は立ち上がり「次は何?」と聞いてきた
「じゃあ尻でテーブル動かしてみてください」
「やだよ!絶対にやだよ!なにそれ性癖!?」
「いや、座れてたから行けるかなって」
「無理!足すりぬけたもん!、お尻も無理!!」
「そうかぁ」
僕はまたソファーに腰を掛け次の質問を考える。
「じゃあお腹空かないんですか?」
「空かないよ、なんかいつも丁度いい感じ!」
「眠気は?」
「眠くならないよ!」
「う~んじゃあ、質問はこんな感じですかね~」
特に何も進展がなかった、強いて言えばすり抜けくらいか、あとは特になんもないなぁ。
ソファーに深く腰を掛けると隣に綾愛も腰を掛けた。
時計を見ると午後九時半を回っており、十時には眠りにつきたい。
明日から常に横にいるんだよな、どうしようか、ほかの人に見えないだろうか、学校ではあまり話しかけないように・・・・・
その日は疲れていたのかソファーの上でいつの間にか眠ってしまっていた。
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