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「クロスロードの靴」 ７１ かおりさんの詩Ⅱ ８ 「小さな命とひきかえに」
「小さな命とひきかえに」
覚えのない命を授かった
実感のないお腹に手をあてる
不安を抱えながら笑みが零れる
孕んだ思いは日々育まれてゆく
あなたは別れが近づいたと言う
わたしは父親のことを訊ねた
あなたはそっと微笑む
その顔に父親の顔を思い浮かべる
願いは確信に羽化する
そうなんだ
そうなのよ
あなたとわたしだけが知る事実
より大切な思いを寄せ
大きくなったお腹に手をあてる
元気に生まれて
それだけが親の願い
分娩中
あなたはわたしに別れを告げた
がんばってと言い残し
小さな命とひきかえに
あなたは闇の中へ消えてゆく
元気な産声が
二人の融合を意味する
私たちは一人になった
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