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『友達』だったら何人だっていたっていい。だけど、『恋人』はひとりだけ。ポリアモリー、という恋愛スタイルもあるみたいだけど、私もきみもそうじゃなかったから。
彼氏はひとり。
彼女はひとり。
嫌いになったわけじゃない、ってきみは言ったけど、二番目になった私は滑り落ちた。きみの彼女、から滑り落ちた。
私たちがずっと『友達』のままだったら、私たちは今も、他愛のないメッセージの往復でけらけら笑っていたはず。互いの家を行き来することはなくなったとしても、気軽に名前で呼び合って、たまには一緒にスタジアムに野球を観に行ったりして。もちろん、きみの彼女も一緒にね。そうしてきみの結婚式にも参加して、私は能天気に笑っていたはず。
いったん『恋人』になったから、すべて私の指先からこぼれ落ちた。
だったらもういらない。
『恋人』なんて、もういらない。
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