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ネットの文章は、オカルトテイストでドールについての考察を煽りに煽っていた。制服姿ということからも、事故死した中学生の呪いだ何だと関連付けて、こちらも好き勝手に書き殴られている。
「二体のドールか……関係あるのかな?」
ないと考える方が、無理な話ではあった。だが結局、初が黒髪のドール以外の情報を手に入れることは、叶わなかった。そのドールにしたって、ただの落とし物だった可能性もあるし、関連付けようとするならば、どうしてもオカルトじみた話になってしまう。それこそ、先程初自身が切り捨てた考えだ。
「他殺にしたって、いったい誰が……相当恨んでいないと、ドールまで用意しないよね……ドールに罪はないのに。可哀想に……」
しかし、自殺だった場合、女本人がドールを用意したということになってくる。であれば、あのドールの姿はどう説明するのか。
「事故現場へ寄った後に、轢かれるなんて……あの駅で乗り換えようとしていたんだろうけど……はあーっ……わからないことだらけだ」
少女が頭を抱えて、事件の難解さに項垂れる。既に彼女のスペックの範疇を、遥かにオーバーしていた。
「わたしが考えたって、仕方ないんだけどさ……」
唇を尖らせて、初はかなでを抱き寄せた。出鼻を挫かれた恨みは、どうやって晴らせば良いのかと、もやもやしている。
「あーあ、もう……いったい、何がどうなってんのー?」
喚きながら立ち上がって、初はもう一度大きな溜息を吐き出した。
「……明日にでも、見に行ってみようかな」
平日は、学校がある。おまけに、今日はもう遅い。明日なら休みだし、特に予定もない。初は明朝、現場へ赴くことを決めた。
「何か、情報が得られるといいけど……」
そうは口にしつつも、内心では「何もない」に一票を投じていた初だった。
◆◆◆
夜が明けて目覚めると、雨が降っていた。予報では、昼前に晴れるとのこと。初は、天気が回復してから出かけることにした。
現在、例の駅は通常業務を再開していた。早いもので、事件から三日が経っていた。
「かなでは……連れて行きたいけど、また雨が降るかもしれないしな……汚したくないし、置いていこう。ごめんね、かなで。待っててね。すぐ戻るから」
部屋にそっとかなでを飾って、初は家を出る。すっかり雨雲の去った、昼過ぎの長閑な街並みを横目に、現場を目指した。
「あんまり、降りたことなかったけど……この駅って、こんな風になってるんだ……」
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