バラバラドール

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「さーて……よくわからなかったけど、あの黒い頭の子、何だか変な子だったな……。暗いというか、薄いというか、そう……というか……ちょっと感覚がしたんだよね……いったい何者かな?」  孟を狙っていたようでもなかったが、あの感じでは、孟のことを知っているようだった。偶然あの駅で出会った――そんなところだろうか。そう敢は推測をする。では、彼女の目的は何か。  あの駅を通過点としたわけでもなく、最寄り駅でもなく、何なら、駅から外に出てすらいないようだった。 「僕たちと同じく、駅の調査をしていた? というか、あの制服、どこかで……あ、確か沖田の妹ちゃんが通うはずだった中学の……?」  どうして彼女は、制服を着用して一人で駅にいたのだろうか。中学校は、先程沖田が降りた駅が最寄りだし、これといった理由が思いつかない。 「部活関連? ほぼ手ぶらで? いや、普通に考えて、ありえないでしょ」  とにかく、自分たち以外にもあの駅を調べている存在がいることは、明白――そう捉えていいだろうと、敢は考える。  もしかしたら、目的はクラスメイトと同じかもしれない、とも……。 「制服からして、現役中学生……じゃあ、妹ちゃんの関係者かな?」  考えてみるが、答えが出るわけもない。青年は、孟にメッセージを送ることにした。  事故の被害者となった、彼の妹の交友関係を調べる必要が出てきたからだ。 「えーっと? 今度、妹ちゃんのこと、詳しく教えてもらえない? 大丈夫なら、家にお邪魔させてよ。ついでに、卒アルがあると嬉しいんだけど――っと。送信」  さて、あの妙に忙しい男がこのメッセージに気付くのは、果たしていつになるだろうかと、敢は一人で賭けを始める。 「今日の夜――いや、明日の朝、かな」  今日中に既読してもらえれば、良い方だ。敢は、スマホをポケットにしまい、窓から見える景色に視線をやった。 「本当、どこの町にもいろいろいるもんだね」  敢が見ているのは、景色であって、風景ではなかった。彼は、他の人が認識しづらいモノが見えるという、特殊な目を持っていた。  その目を使い、切れる頭を使って、彼は学生である傍ら、特殊な仕事をしていた。元々、ミステリーやロジックが好きで、難解と言われるほどに燃え上がる性格をしていたため、性に合ったらしい。彼は、警察が頭を抱えるような不思議な事件を専門に扱う、協力者――俗に言う、探偵業をやっていた。
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