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今回、偶然にも入学した学校のクラスメイトの妹が、不運な事故に巻き込まれた。その事故自体は、何らおかしな点もなく、不幸な事故として片付けられた。
だがその後、別の事件が起きていた。報道はされていないため、一般人が知ることはない。だがそれは、とんでもなく異質で、あってはならないことだった。
もしもこの件が世間に知られれば、パニックは必至。関係機関へのバッシングは相当なものだろう。
そうして、時を同じくして、あのクールな友人が、おかしなことが起きていると言い出したのだ。事故を発端に、自身の周りで不可思議なことが起きていると、あの冷静な彼が言うのだ。
これは、後発の事件に大いに関係しているかもしれない――そう踏んだ敢は、同じ考えに至った孟へ正体を明かした。
基本的には、沖田にオカルトは通用しない。こちらの頭がおかしいのではないかという目で、疑ってくる。彼からの胡乱な瞳にも、敢はもう慣れていた。
だが、妹のことだけは信じる気になれているそうだ。だからこそ彼は、個人的に敢に今回の件の調査を依頼してきた。
「ま、無理もないよな……」
敢は、理系の彼がそうなるのも仕方ないと思っていた。むしろ、頑なに拒まなかっただけ、賢いと言える。
何故なら、孟は妹は死んだのに、何かを訴えかけてくるのだと言ったのだ。
敢は夢にでも出たのかと思ったが、どうもそうではないらしい。彼の話によれば、事故後しばらくしてからのとある日、学校から帰宅すると、メモ用紙が一枚、机の上に置かれていたそうだ。そうしてそこには、謎のメッセージが書かれていたと言う。
もちろん家族の誰もそんなものは知らないし、どう見ても妹の字だと言うのだ。
敢は、同級生が妹を失ったショックを受けている可能性も抱き、そちらの方面からも、こっそり探りを入れてみた。だが彼は、至って精神的にも健康そのものだったのだ。
これは、いよいよ自分の出番かと、敢は孟から先日そのメモ用紙を拝借させてもらった。
そうして、そこに書いてある内容に息を呑んだのだ。
「あの子を止めて。歯車は、狂い出した」
記されていた「あの子」とは、いったい誰か。誰かが、何かをなそうとしているのか。
そうして隠されている、例の事件。このメッセージは、そのことを指しているのか。
「それとも、運転手、藤堂徳の死のことを言っているのか――」
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