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「奏ちゃんは、いつもわたしを助けてくれる。ただ一人、わたしを置き去りにしないでいてくれる。ちゃんと正面から、わたしという人間を見てくれる。……たとえそばにいなくても、心は近くにあるんだね。いなくなっちゃっても、変わらずにわたしの味方でいてくれるんだね」
それが、初にとってどれだけ嬉しいことか。きっとそれは、奏ですら推し量ることはできないだろう。
「ありがとう……本当に、ありがとう。そんな奏ちゃんが、わたしは心の底から大好きです。好きで好きで、大好きすぎて、いつでもどこでも奏ちゃんのことを考えてしまう。奏ちゃん以外なんて、見えないくらいに……」
ふふっと小さく笑って、初は閉じていた目を開いた。そこには、決意に満ちた瞳が輝いている。
「そうとわかれば、じっとしてる場合じゃないよね。わたししか動けないんだし、やることはいっぱいあるんだから。だって、わたしのターゲットは、一人や二人じゃない。のんびりしていたら、何年かかっても終わらないもんね」
ぐっと、両手それぞれで握り拳を作る。気合を入れて、一つ頷いた。
「今度こそ、自分の手でやらなきゃ。奏ちゃんに示すんだ。わたしの想いの深さを。誰が一番に想っているのか、知っていてもらわないとね」
楽しそうな笑みを浮かべながら、少女は肩を震わせた。無邪気な微笑みは、純粋さで彩られている。
「知ってるだろうけど、時々はちゃんと行動で示さなきゃだめだよね。言葉でも伝えなきゃ、不安になっちゃうもんね」
言いながら初は、かなでを抱き寄せる。優しくぎゅーっと抱き締めて、頭を撫でた。
「いつも頑張っている奏ちゃんは、えらいね。すごいね。よしよし、いいこだね」
えらいえらいと、子どもをあやすように穏やかな声をドールへと掛ける。ひとしきり撫でた後はそっと離して、初はこちらを見つめる可愛らしい顔をじっと見つめ続けた。
「可愛い……可愛いね、奏ちゃん。すごく可愛い」
にこにこしながら、かなでの瞳を見つめる初。それだけで、彼女の心は癒された。
「ずーっと、ずーっと一緒だよ。いつまでも、一緒だからね。奏ちゃんも、ずっとそばにいてね。絶対だよ。絶対だからね――そうじゃないと……」
そこで、初は口を閉じた。出かかった言葉を呑み込んで、くすりと笑みを零す。
「いつも元気をくれて、ありがとう。わたし、頑張るからね。――そうと決まれば、早速行動あるのみだ」
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