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そんな最中に起こった、バラバラドール事件。
一見、不幸な事故で亡くなった彼女の死に、謎のドールが纏わり付いている。その不可解さに、何かがあるのではないかと睨んで、孟は今日まで調査をしてきた。
だが、警察は単なる事故として、呆気なく処理してしまった。
他の結果だったならば、良かったのか。この気持ちに整理がつけられたのか――それは、わからない。
調査をしていたのも、何か解明できれば満足できるのではないかと思ったからではなかった。ただ、孟がじっとしていられなくて、何か行動を起こすことで、気を紛らわせていたに過ぎなかった。
だからこそ、結果の内容よりも、結果が出てしまった――この事実に、孟は消失感を覚えたのだった。
「俺は、結局何がしたかったんだろうな……」
ぼそりと口をついたのは、自身への問答。言葉にできない感情を持て余している彼には、答えを出すことなどできはしなかった。
答えを出すべきかどうかも、わからない。
「……どうなんだろうな」
彼ならば、答えを持っているだろうか。
この春にクラスメイトになった、小柄な男、近藤敢。彼は、不可解な事件に首を突っ込みたがった。
初めて会った時から、よく回る頭だと孟は思っていた。敢は、他の同級生とは、どこか違う雰囲気を纏っている。そう直感した。
だから孟は、正体を明かし、ともに調査したいと言ってきた彼の誘いに乗った。
「俺も大概、嘘吐きだな……」
孟は、よくクールと評された。だが、本人はそんなことはないと思っている。顔に出ないだけで、感情は常に胸の内に熱くたぎっていた。
ただ、表に出すことが面倒なだけ。無表情の仮面を被っているだけ。そうしないと、平静を保てないから。
孟は、懐から一枚の紙を取り出した。奏の字にそっくりな、彼女の死後発見された、不可解なメッセージ。
本当にこれが妹からのメッセージであったなら、彼女はいったい何を伝えようとしているのか。
それがわかれば、孟も進むべき方向が定まるのだろうか。
「わからない……だけど、もう手掛かりがない…………いや……」
トラック運転手、藤堂の死亡事故の件は、バラバラにされたドールについての解明がなされていない。
であるならば、その方面から何か動くことはできないだろうか。
「奏が何か望んでいるのなら、叶えてやらないとな……」
行動理由としては、これでいいだろう――孟はそう筋書きを立てる。建前は「妹想いの優しいお兄ちゃん」だ。
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