これが本当に最後だ

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「カンナ。スペースデブリの存在を確認しないで船外活動させたわたしにも責任がある。本当に申し訳ない」  いつもは冷静沈着なアームストロング船長も慌てふためいている。 「いいえ。船長が謝ることは……。誰が船外活動をしても、結果は同じことになったと思います。これは避けられない不運だったんです。その不運をたまたま私が引き受けた。それだけのことです」 「でも、カンナ……」  アームストロング船長はそれ以上、言葉を継ぐことができない。無線の向こう側で船長や他のクルーたちのすすり泣く声だけが響く。  ……ザッ、ザッ、ザッ……、ザザー……。  無線にふたたびノイズが入りはじめる。宇宙船の後ろ姿も小さくなりつつある。あとは、この宇宙空間にたったひとり取り残され、宇宙服に備えつけられた緊急用酸素が切れてしまうのを待つだけ。そうすれば、私はスペースデブリとして宇宙を漂うばかり……。 「船長! アームストロング船長!」  カンナは無線に向かって叫ぶ。
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