これが本当に最後だ

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「……ザッ、こちらアームストロング。どうした? カンナ?」 「私はこれから地球に帰ります」   ……ザッ、ザッ。無線の向こうのアームストロング船長は言葉を失う。孤独と恐怖のあまり、カンナが錯乱したのだろうか、と。 「このままじゃ、どっちにしたって酸素が切れてしまいます。それなら、卓司や両親の待つ地球に帰った方がずっといい」 「……ザッ。わかったよ、カンナ……」  船長の声は震えたままだ。 「地球に戻ったら、両親と卓司に伝えてください。愛してるって」 「……ザッ。君のような勇敢で最高の飛行士に出会えて本当によかった……。ありがとう、カンナ。ザッ、ザッ、ザザー……」  宇宙船の後ろ姿は、やがて地球の描く弧の向こう側へと消え去ってしまうだろう。  カンナは無線機を断ち切る。余計なエネルギーはもう使えない。  カンナは覚悟を決めて地球に頭を向け、緊急用の酸素の残りを、地球とは逆方向の宇宙空間に噴き出させる。なんとかカンナの身体を地球の方向へと進ませるくらいの力はありそうだ。  今から地球に帰るから。待ってて、卓司。  そうつぶやいたカンナは、地球に向かって進んでゆく。せめてなんとか、地球の引力が届くあたりまでこのまま近づいてほしいと願いながら。
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