ここにいては危険だと

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ここにいては危険だと

「カンナ、修理の進行状況はどうだい?」  アームストロング船長からの無線。 「問題なく順調。もう少しで修理を終えて、テストするだけ」 「さすがだよ、カンナ。成功を祈る」  広大な宇宙、地球のまわりを一定のスピードで周回し続ける宇宙船。その船体の外側にカンナは貼りつくように作業している。広大な宇宙に比べれば、宇宙船もカンナもあまりにも小さい。  修理する手を動かしながら、カンナは宇宙に広大さに思いを馳せる。人間はなんて小さく儚い存在なのだろうと。  そのとき、カンナの視界の隅を小さな影が高速で横切る。  ?  カンナはごわごわとした宇宙服を着ているせいで、後ろを振り返ることができない。わずかに横に顔を向けられるだけだ。  こんな宇宙で、何かが飛んできた?  そしてカンナはふとあることに思い当たる。たった今、自分のそばを横切った小さな影はおそらくはスペースデブリだ、と。  考えてみれば、観測機器が故障したのもスペースデブリとの衝突だ。ということは、考えている以上にスペースデブリが……。  カンナは宇宙船の進行方向に顔を向ける。すると、遠くに小さな機械のかたまりが見えて、それが今まさにこっちへと……。  ここにいては危険だと本能が察知し、宇宙船の船体取りつけられた取っ手から手と足を離すカンナ。  その瞬間、猛スピードで飛んでくる機械のかたまりが、カンナのいたところを通り過ぎる。修理中の観測機器を破壊し、そして同時にカンナの宇宙服と宇宙船をつなぐケーブルを切断してしまう。  引っ張られるような衝撃を感じたカンナは、ケーブルが切断された勢いにつられて宇宙船から引き離され、宇宙空間に放り出される。
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