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希望を捨ててはいけませんよ
卓司は研究室でひとり呆然としていた。今まさに、カンナが宇宙に放り出されたパソコンの生中継映像を見ていたからだ。
果たしてこれは現実なのか? にわかには信じられない映像だ。それともこれは手の込んだイタズラなのか? 誰かが俺を脅かすために、趣味の悪い映像を流したのだろうか?
さまざまな可能性を思い浮かべる卓司の心臓は恐ろしく早い速度で鼓動を打ち続け、額や背中に冷たい汗が流れる。手足も震えはじめ、いたたまれない気分に陥る。このままどこかへと走り出して、心の限り叫びたい。不安に押しつぶされそうだ。
そのとき、卓司のスマホがけたたましい音を鳴らす。卓司は思わずびくっと大きく身体を震わせる。
「もしもし?」
アメリカの宇宙航空局からだった。卓司は電話の相手の説明を耳にしながら、椅子に倒れ込むように腰を下ろす。あまりの事態に腰が抜け、自分を支えていられない。
「まだ希望を捨ててはいけませんよ」
電話の向こうの担当者は卓司を元気づけるように言った。
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