希望を捨ててはいけませんよ

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「われわれはこれから人類史上、もっとも困難な問題に対処します。船にいるアームストロング船長以下の乗組員もエキスパートばかりです。カンナだってきっと大丈夫。  だから卓司も祈っていてください。その祈りが届くように、われわれもできる限りの努力をします……」  卓司が電話を切ったあと、すぐにふたたび電話がかかってくる。友人からの着信だ。きっと事態を把握したのだろう。しかし、今の卓司は誰とも話したくはない気分だ。電話を切る。すると今度はすぐにメッセージの着信を知らせる音が響く。誰が送ってきたのかと確かめるより前に、また電話がかかってくる。  今度は同僚からだ。卓司はまた電話を切る。けれども、また着信音が卓司以外は誰もいない研究室に響き渡りはじめる。  卓司は深いため息をつき、スマホの電源を切る。パソコンの画面に表示された宇宙からの生中継画像には、宇宙船の側面部分と青い地球の姿が静かに映し出されていた。
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