私を待っていた、まさばーちゃん

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「おつかれさまでーす!」  病院のように大きな施設の入り口――ではなく裏口から迷わず入った愛衣は元気に声を張り上げる。職員ルームに直結する入口だ。  学校では滅多に見せない華やかな笑顔と明るい声で挨拶をする愛衣の声に『花丸』という二文字が書かれた施設のエプロンを身に着けた大人たちが顔を上げた。 「やぁ愛衣ちゃん、今日も元気だね」 「学校お疲れ様。毎日来てくれて助かるわ」  30間近の男性やベテランそうな主婦感漂う女性たちが柔らかな笑顔で愛衣を迎える。 「おや、立花さん今日も早いね」  施設の責任者、という貫禄が漂う初老の男性が職員ルームに入ってくると、愛衣はパッと顔を輝かせた。 「はい施設長! 今日も花丸介護施設でお仕事頑張ります!」  愛衣は会心の笑顔と共にビシっと敬礼をする。  花丸、という名前の施設は愛衣の住む町の中でも大きな介護施設であり、利用者の容体が急変した際にいつでも対応できるよう病院と連携しているため建物が非常に大きい。資格を取ったらここで正社員として働くのが夢の愛衣は、優しい人と温かい笑顔で溢れる花丸介護施設が大好きなのだ。 「うんうん、元気な愛衣ちゃんを見たらきっと利用者さんたちも喜ぶよ。雅恵(まさえ)さんも待ってるよ」 「もう来てるんですか!? 急がなきゃ!」  施設長の言葉に愛衣は慌てて更衣室へ駆け込むとカバンや制服を放り投げてジャージに着替え、その上に他の職員たちが身に着けていた『花丸』の文字が入ったエプロンを身に着けた。
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