パラバルーンの活用法

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パラバルーンの活用法

 紐たちの怒りもおさまり、玉入れ台はホッと安堵の表情を見せていた。  するとそこへ、パラバルーンが気怠そうにヒラヒラとやってくる。 【パラバルーンとは、パラシュートとバルーンを掛け合わせた言葉である。 子どもが複数人で持ち、回ったり膨らませたりといった技を表現できる、丸くて大きな布の事である。音楽に合わせて動かす事が多い。】 「はぁ…。あなた達は、いいわねぇ…。何だかんだで運動会の競技に参加できるんだから」 「バルーンさん、どうしたんですか?」 「ねぇ、聞いてよ。この前、先生たちが私を倉庫から持って行ったじゃない」 「ええ。どこかのクラスで使うためじゃなかったんですか?」 「私もそう思っていたわよ。でも連れて行かれたのは、遮光ネットの横。 日陰が少ないから、私を広げて日陰を増やすんですって…。 華やかさではナンバー1の私が、ただ干されて外野から見るだけなんて、あんまりだと思わない? もう明日出たくないわっ(涙)」 「そんな大変な事になっていたんですか…。今年は残暑が厳しいですからね…。日陰が多ければ、確かに子どもや保護者は助かると思います。 直射日光の中で長時間過ごすと、熱中症の危険がすごく高くなるので、遮光ネットの下は涼みたい人や、待機中の子どもたちで混み合うことでしょう。 その密を緩和させるための役割は、バルーンさんにしか務まらないと思うんです」 「え…。私にしか、できない事…?」 「そう、他の用具たちにはできない事です。バルーンさんは競技自体には参加しませんが、みんなが健康な状態で運動会に参加するための、とても重要な役割を担っているんです」 「そう言われると、悪い気がしないわね…。じゃあ明日は、特製スペシャル遮光ネットとして活躍してしあげようかしら。 よく考えたら、ずっと畳まれていた布を乾かすのにも、丁度良いかもしれないわね」 「そうですね。カラフルな特製遮光ネットは、きっと子どもに人気だと思いますよ♪」  気怠そうだったパラバルーンは、いつの間にやらすっかり機嫌が良くなり、 ワルツのリズムを刻みながらケースの中へ戻って行った。 
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