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意思持つメガネ
「ねえ、今どこにいるの?」
携帯電話のアラームが十回くらい鳴り響いた所でようやくベッドから這い出たナナコ。その頭には今朝も相変わらずの寝癖が大量発生していた。
半分しか開いていない目で、私のことをおろおろと探している。
半開きな上に、当然ながら裸眼だ。その状態ではまともに周りが見えないはずだ。危なかっしいったらありゃしない。
全く、実際はすぐ近くにいるというのに。私はテレビ台の上だよ、ナナコ。
最近この部屋にインテリアとして仲間入りしたフェイクグリーンの横に、昨日の晩ナナコが置いたんじゃないか。毎日毎日、ナナコはこの調子だ。寝たら記憶がリセットされてしまう仕組みになっているのだろうか?
ナナコに私の姿は見えていなくても、私からナナコはよく見える。
景色を透過させるガラスの美しさはまるで私の心のよう。このガラスを、私は二枚装備している。一枚では駄目なのだ。二枚揃って初めて百パーセントの力を発揮できる。
そしてこの薄いガラスを支える、ダークブラウンのフレーム。太めな造りが洒落こんでいる。我ながら惚れ惚れしてしまうデザインだ。ナナコのうすぼんやりした顔も、私という武器一つで驚くほど様になる。
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