意思持つメガネ

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 けれどナナコは、いつの間にかコンタクトを日常的に使用するようになった。私たちメガネにとって、コンタクトとは非常に厄介な存在だ。天敵と言ってもいいかもしれない。特に世の女性は、メガネとコンタクトとで天秤にかけた時、後者を選ぶ人が圧倒的に多いのだ。  私には一向に理解しがたい。コンタクトの何が良いというのだろう。あんな物、視力を矯正させる機能があるというだけの、うっすい膜に過ぎないじゃないか。  その点、メガネはデザイン性で個性を出せるという強みがある。カバンや帽子と同じ、着飾るためのアイテムとしての役割だってある。  今早速ナナコは化粧に取り掛かっているけれど、メガネをかける時のナナコは化粧に時間をかけない。さっきも言ったように、メガネをかけるだけで顔の存在感が増すからだ。私には、朝の身支度を時短化させる力もある。  まさに今朝ナナコがコンタクトを選ばなかった理由がここにある。ナナコはコンタクトを入れる時も外す時も、恐ろしく時間がかかるのだ。コンタクトの装着にもたついている暇はない、そう判断して私を選ぶ朝はよくある。
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