意思持つメガネ

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 それでもナナコは世の女性たち同様、日常生活ではコンタクト派なのだ。コンタクトにするメリットとは一体何なのだろう。私がメガネである以上、これは永遠に解けない謎なのだろうか。  ファンデーションを塗り、眉を描き足し、瞼に控えめに色を乗せ、睫毛を上げ、頬と唇に血色感を与えた所で、ナナコの顔への一通りの施しが終わった。  簡単な化粧とは言ってもこれだけの工程を踏まなければいけないらしい。全く、女とは大変な生き物だ。  化粧を終え、再び私を手に取るナナコ。これでようやくナナコの顔は百パーセント完成した。  鏡に映るメガネ姿のナナコは、非常に知的な雰囲気を醸し出している。コンタクトよりも絶対にこっちの方が良いと思うのに。思わずセンスを疑ってしまうぞ、ナナコ。時間もかかるし外見のインパクトに劣るコンタクトなんて、早く辞めることを強くお勧めする。  パジャマから着替え、寝癖直しスプレーで髪も整え、ナナコの身なりは見違えるほどに変貌した。決して大袈裟に言っているわけではない。ちょっとした変身だ。イリュージョンだ。  もう少し余裕を持って起きればいいものを、とは思うけれど、限られた時間と闘いながら自分を作り上げていくその過程には目を(みは)るものがある。
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