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私に待っていたもの
遼子の入った墓地はどこも荒れていた。
供物であろうビールの缶や、故人の愛用していたであろう湯呑み茶碗が、風か烏の悪戯か無惨にも破片になって飛び散っていた。
そんな人里離れた薄暗い墓地に私は喪服と花束を駆ってたどり着いた。
浦ノ名(うらのみょう)家の墓の前。
「遼子、俺と結婚してくれ」
私は遼子の最期の男になったのである。
遅れしも
今も変わらじ
我が真胸
華は散るとも
我は忘れじ
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