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変果
遼子は変わり果てていた。
美しかった張りと艶のある黒髪はおそらく抜け落ちてしまったのであろう、紺色の毛糸の帽子があてがわれていた。
眼は窪み、どす黒いくまを帯びて私が知っている世界一美しい遼子はどこにも居なかった。
察するに、無数の星の如く遼子と関係した男達は、輝きを失った彼女に愛想を尽かし、皆去った後なのだろう。
何もかも失った遼子が、最後に便りを送った最下位の男が私だったわけだ。
それでも嬉しかった。
最下位でも愛されたい。
私は会社を辞めた。
やっと!やっと巡ってきた遼子との時間。
逃す手はない。
20数余年もの間全く相手にもされなかった私と遼子との対話がついに火蓋を切ったのである。
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