大魔女の遺言

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 大変な状況のライトブル商会だが、決して負けられない商会があった。  それが父アントンの弟である、サムス・ヒルトンが経営するヒルトン商会。婿養子に入った先の家が商会をもっており、継いだ形となる。  父と叔父は、理由は分からないが昔からとても仲が悪かった。偶然にも、ともに商会経営者になってからは互いをライバル視するようになり、サラサも幼いころから叔父やサラサと同じ歳の一人息子――レイ・ヒルトンの悪口を散々聞かされてきた。 (それなのに……マーガレットお婆様は何を考えているの⁉ レイと私を結婚させろなんて……)  俯くと黒髪が頬に流れ落ち、サラサの表情を隠す。  先日亡くなったマーガレット・ライトブルは、国でも有名な魔女だ。  真っ赤な髪がトレードマークで、≪赤の大魔女≫という二つ名で呼ばれていた。あらゆる事象を操り、自国だけでなく他国からも頼りにされていたが、息子たちの不仲はどうにもできなかったらしい。 ”はぁ……全くお前たちの父親は……これはあたしが、何とかしなきゃいけないねぇ……可愛い孫たちのために……”
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