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お見舞いに来たサラサをベッドの上で迎えながら、いつも口癖のようにぼやいていたのを思い出す。
ちなみにマーガレットの遺産、とは、彼女が生前様々な依頼や冒険を経て得た財宝のことだ。しかし彼女が亡くなった時に確認したのだがどこにもなく、恐らく生前に様々な施設に寄付して無くなったのだと結論付けられていた。
その矢先に、例の遺言である。
サラサは思わず声を荒げた。激しい怒りが沸き上がる。
「昔、お父様と叔父様が不仲だと知らず、レイと仲良く話していただけで、あんなやつと口を聞くなと怒鳴り散らしたのはどなたでしたか? ずっとヒルトン商会の悪口を聞かされてきたというのに、今になって、レイと結婚しろなど勝手すぎませんか⁉」
父親が黙って頭を下げた。
それが、答えだった。
家のために、
祖母がもっている遺産を得るために、
いがみ合っていたレイと結婚しろと。
いや、
「結婚しろではない。もうお前たちは、法的に夫婦なのだ。だから――」
父親の顔が、今まで以上に渋いものへと変わる。
嫌な予感がした。
そして予感は、的中する。
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