大魔女の遺言

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 幼いころ、レイ・ヒルトンと初めて出会った時のことを思い出す。  確か、サラサが六歳ぐらい。何かのパーティーに連れて行って貰った時だったはず。  彼は、大人しいサラサにはない快活さをもっていた。好奇心旺盛な瞳で周囲の大人たちに臆することなく話しかけ、新しい発見に対し常に瞳を輝かせていた。そんな純粋な少年の姿を、大人たち皆が微笑ましく見守っていた。  居ても分からないぐらいの存在感しかないサラサにとって、レイの輝きは、純粋さは眩しかった。 (確か話しかけてくれたのも、レイからだったわ)    正直、嬉しかった。 ”サラサの髪……すっごく綺麗だよな! 真っ赤な花が咲いているみたい!”  祖母譲りの赤い髪がコンプレックスだったサラサにとって、彼の裏表ない賛辞は恥ずかしかったが、嬉しくもあった。 ”またいっぱい喋ろうな!”  満面の笑顔を浮かべながら、別れ際に手を振ってくれたことを思い出す。    だが家に帰ると、  ”レイは、ライトブル商会の……いや、お前の敵だ! もう二度と、あいつと仲良くするな‼”  酷い剣幕で父親に怒られたのだ。  今思い出しても、恐怖で足が竦む。
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