和也side漆原とのキスの余韻

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和也side漆原とのキスの余韻

漆原に強請ったキスは佐藤の評判通りというか、想像以上だった。 最初呆れた顔をしていたはずなのに、漆原は急に悪い顔をして微笑んだ。 その顔がやけに綺麗に見えて、俺は身体の奥がゾクリとした。 レクチャーだからこちらから仕掛ける事もしなかったとはいえ、そこからは完全に漆原のペースだった。 漆原の何だか女の様な微かな甘い喘ぎ声を聞きながら、俺は身体がどんどん敏感になっていくのを感じた。 口の中でうごめく、漆原の男にしては小さめの舌が妙に甘く感じて夢中になっていると、突然それは終わった。 漆原はそっけない態度で終了を告げるとさっさと夕食へ行ってしまった。 俺はしばし呆然と漆原の残像を追った。 情欲から突然突き放された身体の熱は行き場が無くなって、俺は立ち上がりかけた昂りを握りしめた。 何だかこのまま、欲を吐き出すのも漆原にしてやられた様で、面白くない気がした。 けれど俺の身体に残った漆原の良い香りや、甘い味、耳に残る柔らかい声、案外華奢な身体の感触、俺を翻弄したキスを思い出して我慢できなくなった。 誘われるままにする欲望解消の時とは違う、この熱さと高まりに煽られて俺は手のひらに白濁を吐き出した。 何だか、これからも漆原と同じ部屋で過ごすというのに、色々困ったことになりそうな気がして気が重くなった。 こんなに俺が振り回されているのがトモにでもバレたら、どんなにイジられることか…。アイツには絶対バレない様にしなくちゃな。 夕食のために食堂に行くと、入り口で食事を終えた漆原とすれ違った。 部屋で俺にキスした時はあんなに甘い顔をしていたのに、いつもの綺麗な顔で塩対応だった。 余韻も何もなくて、俺もポーカーフェイスを意識はしたけれど、何か負けた気がした。 食堂では顔を赤らめた田中翔太の周囲に何人かが集まっていて、明日がどうの、ケンケンとキスがどうとか盛り上がっていた。そういえばリストの中で丸をつけたのが田中だったなと、ぼんやりとその喧騒を眺めながら思い出していた。 「明日の放課後、ケンケンは田中翔太にキスの手ほどきするんだって。 あー、羨ましいんだけど。ボクだってケンケンとチューしたかったのにぃ。 ケンケンがボクとはしないって言うんだよ。 ボクだってケンケンに強請られるくらいのキステクニックあるのに。ねぇ?和也。」 いつの間に居たのか、俺の隣にトモがトレーを置いた。 「知らね。でもまぁ、漆原は佐藤が言うくらいだからキスは…上手いんだろ。」 俺はついさっきまでの漆原のキスと自分の痴態を思い出して、慌てて口に食べ物を押し込んだ。 トモが興味深そうな目で俺のことを見てたのには気付かなかった。
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