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和也とモニターデート
「何で和也とデートなんだよ。」
僕は口を尖らせて映画館に来ていた。和也と。
「世の中、こんなに女の子たちが居るっていうのに。何で学校の外でも男同士でつるまなきゃいけないんだ。」
とは良いつつ、久しぶりの外出だし、一応デートだし、僕は中身女子だし、一応相手は気心しれてきた和也だし。
許せる範囲でオシャレもした。元々背は大きくない、いや、女子としては大きめの169cm。健斗が173cmだから誤魔化しは効くだろう。
元々明るい茶色の猫っ毛で、健斗のふりする為に切ったけど、最近伸びてるから男にしては長いかも。
体型隠しでオーバサイズの白いパーカーとくるぶし上の黒いパンツ。ハットと靴は黒。モノトーンで決めてみました。
和也は…まぁイケメンは飾る必要ないのが悔しいよね。
ワックスで立てた短髪でますます背が高く見えるけど、実際183cmあるらしいからほぼ185cmじゃないの?
ハワイ系のグレーから紺へのカラーグラデーションTシャツに、白パンツ。お洒落上級者見える。スタイル良いなあ。
まぁさっきから街ゆく女子たちの視線が痛い!こちらをチラチラ見て声かけてきそうだよ。
いっその事、逆ナンされてダブルデートの方が楽しいかも。久しぶりに女子トークするチャンスかも?
僕がそんな事を考えつつニヤニヤしてると、和也はさっさとチケットを買って戻ってきた。
そして僕の手を引っ張ると映画館のシートまでグイグイ引っ張っていった。
「え?何でカップルシートなんだよ。」
「だって今日デートだし?ちゃんとモニターしたいからねー。」
和也はニコニコして、僕にドリンクを渡してきた。こいつ慣れてるというか、とっても気がきく良い男だな!
「物好きだね。ま、いいけど。これ、ありがと。」
僕は喉が渇いてたので、喜んで飲んだ。
「…漆原は時々凄い可愛い顔するんだよね、気づいてる?」
ん?何だか怪しい空気になってきた…。こちらをじっと見つめる和也の目がヤバい気がする。
「か、可愛いとか言われても嬉しくないし。トモなら喜びそうだけど。おい…、何で手なんか繋いでるんだよ。」
いつの間にか僕の左手は和也にしっかりと握られていた。しかも恋人繋ぎ!離れないっ!
「離さないから諦めて。俺モニターはちゃんとやるタイプだから。」
和也は嬉しそうにそう言いながら優しく笑いかけるもんだから、僕は当てられて顔が熱くなってのがわかった。
ぶっきらぼうイケメンの優しい笑顔、破壊力半端ない…。
僕は何だか和也の方を見れなくて不貞腐れた顔で真っ直ぐ前を向いたんだ。
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