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デートは誰得
「ケンケン昨日のデートどうだった?和也と行ったんでしょ?」
相変わらず場所を選ばずブッ込んでくるな、トモは。教室のど真ん中だぞ。
僕は思わず埴輪顔になりながらぶっきらぼうに返した。
「別に。というか、お試しデートモニターな。好き好んで行ったような口ぶりやめろ。
二人で映画行っただけだよ。」
「えー、それだけ?んー、和也にモニター体験談聞かないとね。
あ、おーい和也こっちこっち!」
相変わらず無表情で和也はこっちにやって来る。
僕はまだ気まずい思いだったが、努めてクール、俺様フェイスを頑張る。
いや、昨日は和也のペースに完全に巻き込まれた。
手を繋がれた辺りからグイグイ行かれて、映画が思いの外良かったから泣いてたら優しく慰められて…。
何流されてんの~わたし。いや、僕。自分から乗り気になっちゃうってどんだけ⁉︎
その後は必死に何でもない風を装ったけど…。同室なのにこれ以上関係深まったらヤバいよ。バレるよ!
「和也、昨日のデートどうだった?メロメロにされた?」
「んー。…普通?」
僕は和也の返答にホッとした。キスしたとか、色々言われたらトモが暴走するじゃんか。セーフだよな。
「ん?何か怪しい空気なんだけど、君たち。ボクね、この感じはピンとくるんだよね…。」
「何の話?」
隣の席の佐藤が日直から戻ってきた。僕らを見回してから、僕を見つめて言った。
「ああ、デートの話か。それなんだけど、僕も隣の席のよしみとして、モニターしたい。
同室の和也がするなら僕もイイよね?」
「はぁ?何でみんなして勝手な事言うんだよ。もうしない!デートもキスもしないからな!」
僕はこれ以上破滅の道に進むのを食い止めようと、言い切って教室を逃げ出した。
校舎の広い中庭をひとりボテボテと歩きながら、ここまで話が拗れた原因を考えた。
ああ、強烈強引なトモのせいでもあるけど、ほぼ僕が流されやすいその一点に限る…。
そうじゃなかったら、そもそも弟のこの学校に来てないだろうし。
自分のお人好しぶりにため息しか出ないんだけど…。
中庭のベンチに座ってこの身を憐んで呆けていたら、隣に誰か座った。
「ほら、飲めよ。酷い顔してるぞ。綺麗な顔が台無しじゃんか。」
「タクミ…。これサンキュ。」
タクミがくれたほんのり甘いサイダーは僕の萎れた気持ちを明るくした。
「何か気が滅入ってたんだけど、スッキリした。飲み物で気分上がるなんて我ながら単純だな。ありがと。」
僕は笑いながらタクミを見上げると、タクミはマジマジと僕を見つめた。
「…なぁ、お前って本当に男か?こうして見ると、女にしか見えないんだけど。…ちょっと確かめさせて。」
タクミはこう言うと反応する間もなく、僕の股間を掴んだ。そして自分の手を見つめた。
「マジか。…あるな。俺、女が好きだと思ってたけど、男もマジでイケるんかな?」
タクミがひとりの世界に入り込んだので、これ幸いとお暇する僕。
ふう、今日もちんたま君はイイ仕事したぜ。ありがと、ちんたま君!
僕の貞操は君に守られてる!
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