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僕の事情はちんたま君と共に
私はベッドに転がりながら、さっきまでの状況を思い浮かべていた。
緊張を隠して食堂に入ると、何だかチラッと見られる。声を掛けてくる訳でもないし、じろじろ見るわけでもない。
チラッとだ。うー、訳がわからない。
確か弟の健斗は友達はほとんど居ないって言ってた。
もしかしてイジメられてた?って聞いたら、馬鹿にしたような顔で言い放ったっけ。
「僕がイジメられる?誰にそんな事言ってるの?アホなの?」
ああ、思い出しただけでムカついてくる。私がこんなに困ってるのはアイツの所為なのにっ!
飛び級して留学から戻ってくると弟は私の顔をじっと見てから両親に言ったんだ。
「ねぇ、ケイに僕の身代わりになって貰えばいいんじゃない?」
健斗の通う名門全寮制男子高校は、病気以外の休学が許されていない。
しかしひとつ年下の弟は、高校1年生の時マックス3ヶ月間の権利を使い切った。しかも遊び回るためだけに。
元気なんだからさっさと学校行けよと思うところなんだが、今回はのっぴきならない事情が発生した。
海外で俳優デビューできるチャンスが巡ってきたと。伊達に遊び回ってただけじゃないらしい。
そのための準備やらレッスンやらにどうしても現地に行かなければならないって。
行けばいいじゃん!と私は声を大にして言った。
そこで異を唱えて譲らなかったのが両親だ。そんな不確定な話に乗っかれない。
頑張って入った名門高校の生徒じゃなくなるのはリスクが大きい。
つまりは美味しい所をどちらもゲットしたいと考えてた所に、まんまと私が帰国してきたって訳。
不本意ながら私は飛び級で大学へ行く権利はもう持ってるし、健斗によく似た背格好に顔つき。
女らしい身体つきじゃなかったのが運のつきだった、ほんと。自分に運が無さすぎる。
小さい頃から健斗の尻拭いをしてきたけれど、こんな形で最後の?ご奉公をする羽目になるとは…。はぁ。
健斗の噂も気になるし、イマイチ訳がわからないことが多くて、ただでさえ普通の状況じゃないのにと、私はベッドで頭を抱えるしかなかった。
翌朝私はいつもより早めに起きて特殊なアイテムを装備するべく身支度に勤しんだ。
渋る私に両親が作ってくれたアイテム。その名も『ちんたま君』。
特殊なシリコンで出来ていて、腰に装着するとあら不思議、完璧な男の子になっちゃうんですよねー。
まぁこれがあればと私も不承不承このヤバい仕事?を引き受けたって訳。
さぁ、行くぜ!ちんたま君!オレも男だ。…はぁ。
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