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バスケは体当たり
ダムダムと体育館に響くボールの音。うー、血潮が湧くぜぃ!
留学先でストリートバスケをやってたので、バスケは大好きだし、結構自信もある。
僕がポーカーフェイスでキョロキョロしてると隣に佐藤がやってきた。
「健斗って、バスケ好きなの?いつもよりやる気出てるみたいだけど。」
「…ん、まぁな。男子は体育好きだろ。」
「くく、そんなヤツらばかりじゃないけどね。トモみたいに立ってるだけみたいなのも居るから。」
あー確かにトモがやる気だして体育頑張る姿は思い浮かばないな。
アイツが頑張るのはいつもロクデモナイことだけだ。
「チーム分け決まった?」
「うん。僕は健斗と一緒のチーム。よろしく~。」
僕はチラッと佐藤を眺めた。佐藤は可愛い系男子ではあるけど、身体付きは細マッチョで背も178cmぐらいあって小さいわけじゃない。どちらかと言うと、顔が小さいのでもっと大きく見える。
明るいマッシュカットで人懐っこい柔らかい目付きの醸し出す雰囲気はいかにも都会の男子校生だ。
話し方も柔らかいし、これはナンパしたら皆警戒しないでついていくヤツだ。
「…佐藤って女ウケしそうだけど、裏で何してるか分かんないタイプだよな。」
僕が小さい声でボソボソ言うと、佐藤はこっちを覗き込んで言った。
「何なに。健斗俺に興味あるわけ?女ウケがイイってのに反論はしないけどね。
僕は裏はないよ。熱が入らないだけ。
…健斗は一見凄くクールだけど、最近の健斗は案外中身が熱い気がする。意外だな。」
僕はギクリとして、余計なことは言うまいと黙った。
鋭いホイッスルと共に試合が開始された。僕が得意なのはスリーポイントシュートだ。
大体、みな背が高すぎる。170cm弱の僕には中を攻めるのは荷が重いっての。
とはいえ、ひらりひらりと敵を交わしてゴール下に切り込むのは楽しすぎ。僕は何度か切り込み隊をやって、得点した。
「健斗ナイッシュ!」「いいぞ!ケンケン!」
チームのみんなが喜んで一体感を感じるのは最高だな。
ハイタッチで走り戻っていると敵チームの声が聞こえてきた。
「タクミ!ケンケンマーク!」
うおっ、でかいタクミ来ちゃったじゃん。タクミはニヤリと笑うと僕に立ち塞がって言った。
「ケンケンやるじゃん。オレを攻略しないともう無理だぜっ。」
「…はぁはぁ、ふん、タクミ攻略?やってやろうじゃん?」
僕はニヤリと笑うとボールを貰って背中にタクミを背負いながら、大きくフェイントをかけた。
タクミは息を吸い込むと身体を伸ばして僕の前に立ち塞がった。
どちらが最初にもつれたのか分からないけれど、気づくと僕はタクミの下敷きになって、強く背中を打ったのか息が詰まっていた。僕たちはチームのメンバーに起こされていたみたいだったけれど、僕はだんだん意識が遠くなっていった。
やばい、これ…。まじ息苦しい…。
ふと気づくと、目の前に心配そうな目があった。
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