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目の前の天国と地獄
僕を覗き込む心配そうな目。僕はまだ状況がピンと来なくてぼんやりしていた。
どうもベッドに横になってるみたいだ。
「大丈夫か?ケンケン。お前、気を失ったからここまで運んだんだよ。」
タクミはそう言うと僕から目を逸らした。
「…なんかゴメン。オレが押しつぶしちゃって。どっか痛いか?」
僕はゆっくり起き上がった。ふと、その時何か違和感があったんだ。
胸の締め付けがない…。
焦って下を見ると体操着が脱がされて、コスプレタンクトップのサイドファスナーが開かれていた。
終わった…。マジで終わった。女ってバレた!僕は何も言えずに俯いた。
タクミはバツが悪そうに頭を掻きながら言った。
「お前、そう言えば事故って学校来るの遅くなったんだよな。もしかしてそれってコルセット的な服な訳?
運んだ時にすげぇ息しづらそうで苦しそうで、脱がしたらキツそうだったから緩めたんだけど。
そんなの着てバスケなんて無理しすぎだっての。」
タクミはそう言って、僕の頭を撫でると苦笑した。
終わってなかった~!バレてないじゃん⁉︎イケる?
僕は天国と地獄並みのジェットコースターに乗ってるかのような感情の起伏にちょっとおかしくなってたのかもしれない。
すっかり安堵した僕はいつもの取り繕った自分を忘れて、にっこり微笑んだ。
「…タクミありがと。心配かけちゃったよね?」
タクミはヒュッと息を呑んで、僕を凝視した後ゆっくり僕のベッドに腰掛けた。
「…ケンケンがそんな可愛い顔するから悪い。」
僕は気がつくとタクミの腕の中に居て、キスされていた。
またなのか…。またこのパターンなのか。僕は皆に勝手にキスされる運命なのか。
僕は何だか抵抗する元気もなく、為されるがままにキスを受け入れてしまっていた…。
タクミは僕が抵抗しないのを見て取ると、優しく唇を吸ったり、食んだりして愛撫した。
焦ったくなった僕は少し唇を開いてタクミの唇をぺろりと舐めた。
タクミは身体を強張らせるとやおら本気モードになったらしく、僕の口の中に押し入ると激しく蹂躙した。
上顎を何度も撫でられて僕は思わず喘ぎ声が出てしまった。
「…ここが好き?可愛いな、お前。」
タクミはクスッと微笑むと僕の後頭部を掴んで更に深く口づけた。僕たちは粘膜の柔らかさを楽しんだに違いない。
そう、キスを楽しんでたんだ。
僕がキスに夢中になってると、タクミは開いたファスナーの隙間から手を入れて背中を撫で始めた。
僕はハッとして身を引き離すと、慌ててベッドを降りて目を丸くしてるタクミを睨みつけて言い放った。
「調子に乗りすぎだろ。キスなんて挨拶なんだからな。」
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