タクミside逃げ出した野良猫

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タクミside逃げ出した野良猫

オレは腕の中から逃げ出したケンケンの温もりを感じていた。 さっきまでこの中に居てしっかり捕まえていたはずなのに、スルリと逃げられてしまった。 一年の頃から目立った奴だった。綺麗な顔だからってだけじゃない。 他人とつるまず、誇り高いキング、あるいはクイーンといったオーラを発散させて、心が弱い人間なら思わずひざまづきたくなる様な。 まぁオレは女好きだから、綺麗だろうが男には食指が湧かなかったけど。 2年になって漆原健斗とクラスメイトになった事に気づいたのは、あいつが欠席してたせいだ。 噂では事故ったとの事だった。 案の定出て来た途端、注目を集めた。しかも今回は漆原のキスレクチャーというショッキングな話題で。 まぁトモに目をつけられたら誰でも無事では居られないから、しょうがないけれど。 2年になってトモに付け入る隙を作ったのも確かだった。その後の展開を見るとそう思う。 漆原がキスした相手は皆どこか夢見るというか、メロメロにしてやると不敵に妖しく笑ったあの漆原の言葉がそのまま実現してしまったようだった。 他人に関心のない和也でさえ、同室という事もあるのか時間と共に漆原に振り回されてるのが見えて、しかもデートまでしたらしい。 和也を知ってる人間にとっては全くありえない行動だ。 その頃からオレの中で漆原という人間にどうしても踏み込んでみたくなったのも、しょうがないだろう。 ベンチで萎れてる漆原にちょっかいをかけたら、思わず女かと思ってボディチェックしてしまったほどの可愛いさだった。 ほんと漆原ならイケると本気で思った。 その上の今日の体育だ。ちょこまかと動く漆原をガードした時にうっかり押しつぶして、気絶してしまった漆原。 慌てて抱き上げて保健室まで運んだが…、見た目より軽いし、骨細?だし。目を閉じた顔もほんと女みたいな…。 眉間に皺寄せて苦しそうだからピタッとしたトップスを脱がしたら、コルセットみたいのを着てて。 これが苦しいのかとサイドファスナー下ろしたら、肌が露出した脇が妙に目に飛び込んでくるというか…。 男なのに漆原のちくび見たいなんて不埒な気持ちになっていたら、ぱちっと目を開けた。 あぶねー、ヤバかった。胸まさぐってたら変態だぞ、俺。いや、BLか?じゃ、変態じゃないか。 その上上気した汗ばんだ可愛い顔で笑うから、つい魔がさしてキスしちゃった。 でもあいつもノリノリになるから…でもキスであんな気分になったの久しぶりだったな。 あいつ何でキス返してきたんだろう。 そう言えば、キスは挨拶とか言ってたし、色んな奴ともしてるし。ん?やっぱり挨拶か? あーもう、ほんとよくわからない奴。結局オレも和也みたいに振り回されてるじゃんね。 はぁ、もうちょっと背中撫でたかった。あいつの肌めっちゃ気持ち良かった…。
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