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相関図
服を掴んで保健室から逃げる様に飛び出した僕は、トイレの個室で服を整えた。
ふぅ、マジ焦った。絶体絶命だったけど、タクミが勘違いしてくれて大逆転だったな。
僕は安堵で思わずニンマリしてしまった。
ニヤつきながら教室に戻ると、佐藤が駆け寄ってきた。
「おい、大丈夫か。」
そう言いながら、僕の身体を撫で回すもんだから僕はギョッとしてスルリと身体をくねらせると慌てて席に戻った。
「…心配かけて悪い。タクミが面倒見てくれたから。もうすっかり大丈夫だから。」
僕は気まずい気分で前を見ながらいった。
佐藤はそっかと呟きながら自分の手のひらを見つめながら隣の席についた。
その時、佐藤が複雑そうな顔で考え込んでいるのに気づかなかった。
その日以降、タクミは何かと僕に付き纏う様になった。
僕は案外タクミの軽い調子が嫌いじゃなかったし、そのフレンドリーさは留学先の友人らを思わせたせいもあって、何となく突き放すこともせずに放置していた。
保健室で僕を男だと再認識したのも僕の安心感に繋がった。
僕とタクミは一緒にランチに行ったりする機会も増えていった。
「ふーん、ケンケン最近タクミに懐いてるんじゃない?何かあった?…裕。」
トモは漆原とタクミが一緒にランチをしてる姿を眺めながら僕に聞いてきた。
僕は釣られる様にケンケンたちの方を眺めて、ちょっと胸が痛くなるのを感じた。
「…話しただろ?体育の時に健斗が倒れちゃって、ぶつかったタクミが看病したんだよ。
それから何かタクミが構う様になって、今みたいになってる感じかな。」
トモはそう言う僕の顔をニヤニヤしながら見つめて言った。
「裕は随分面白くなさそう。嫉妬してる?」
僕は息が詰まった気がして無意識に手で胸を撫でて、黙って食べ始めた。
「まぁ、嫉妬してるっぽいのは裕だけじゃ無さそうだけどネ?」
トモの言葉に顔をあげて視線の先を見ると、和也がやっぱり健斗の方を見つめていた。
トモはクスクス笑ってモゴモゴ言ってたけれど、聞く気にはなれなかった。
『めっちゃ面白くなってきた。ケンケンサイコー。ふふ。』
「ケンケン~。待って。」
僕は駆け寄ってくるトラブルメーカーを眉を顰めて見つめた。
「…じゃあな。」
「あ!酷い!まだ話もしてないのにぃ。」
「トモの話はロクなことが無いから。聞かない方がマシなんだ。」
「ふふ、それは褒め言葉だね。ボク、ケンケンにちょっと二人だけで聞きたいことがあってね。ちょっと時間取れる?」
僕はトモのしつこさを知っていたので、早々に諦めてトモの後をついて行った。
その時の僕に言いたい。走って逃げろと。
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