山登り

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山登り

はぁはぁ、はぁはぁ、はぁはぁ。 もう聞こえるのは自分の息遣いと耳鳴り。キツい、思いの外キツい…。 「健斗っ、大丈夫か。」 そう言う佐藤だって大丈夫そうじゃないよね。 滝のように汗かいてはぁはぁしてるし。何ならちょっとエロいし笑。 いつもの可愛い顔じゃなくて男の子を感じるなぁ…なんて現実逃避してました。 後ろからは和也やタクミたちがピッタリマークして登ってくるから、僕の可愛いお尻が視姦されてる気がしてくる…。 「ふぁー着いたぁ!」 キャンプエリア到着で一気にテンション上がる僕たちだ。マジでヘロヘロ。 「なんだ、漆原グロッキーだな。」 「…普段チャラいくせに肉体派なのか、タクミは。」 「え?見たい?漆原なら二人きりでたっぷり見せてあげるし、触らせてあげるよ~?」 僕の冷たい眼差しに怯まない男だ、タクミは。 「佐藤、次何するんだっけ?」 僕はタクミを放置して、グループの仕事に取り掛かった。テント張る前に皆で簡易食を食べるお仕事。 僕たちは何だかんだで普段とは違う開放的な自然の中を満喫した。 味気ないレトルトやスナックバーも食べて楽しいってもんだ。 男子高校生にはちょっと食べ足りないかもね…。 「トモ、何処にテント張る?」 トモはこちらをチラ見すると気怠そうに言った。 「うわ、妙に張り切ってて鬱陶しい…。大体僕は肉体派の奴と組んで、サクッとテント張ってもらって、夜もテント張って楽しむ予定だったんだ。 何でケンケンと組んで一緒に寝ないといけないのさ。」 「トモ卑猥すぎwお前漆原独り占めで皆んなから羨ましがられてんのに。」 タクミが後ろから僕に追い被さって口を尖らせて、僕の首筋に鼻を突っ込んで嗅いできた。 「あー、漆原ってホントいい匂いするんだよなぁ。普通、山登ってきたら、汗臭くてたまんないだろ?」 「んっ。くすぐったい!ちょっ、退けよ!離れろ!悪霊退散!」 僕は慌てて腕の中で暴れて、タクミから脱出した。 「…タクミ最近距離近すぎじゃない?健斗が嫌がってるじゃんか。」 「何、佐藤嫉妬してんの?こんなの早い者勝ちだって。漆原は俺が唾つけたんだ。」 僕が呆然と、このおバカなやりとりを見てると、ぐいっと手を引っ張られて連れて行かれた。 握られた手の先を見ると和也がいた。何かデジャブ。デートか。 「お前はこっちでトモとテント張れ。端っこなら変に注目されないだろ。俺も隣で張るから。」 これは…キュンとするところなのか、チェックメイトされて震えて慄くところなのか分からない…。 「う、うん。じゃあトモ呼んでくる。」 何か最近僕の周りが変な感じなんだよなぁ。何なの?みんなして。はぁ。
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