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私の帰りを待つご飯
おにぎりに卵焼き。
それは、母が去る前に残した私宛の夕飯だった。
父と離婚した母の味。
それは、お袋の味として今でも記憶に残っている。
大きなおにぎりの中には、醤油と混ぜたおかか。
ちょっと味が濃い目の甘じょっぱい卵焼きは、焦げが良いアクセントになっていた。
家事が苦手な母の唯一無二の得意料理だった。
学校から帰ると、置いていたのはその二つ。
母は、父や私に愛情が無いわけでは無かったけれど、何よりも仕事を優先する人だった。
看護師をしていた母は、いつも私の知らない人の心配をしていた。
父は、そのことを咎めることは無かったが、寂しそうな顔をしていたことはあった。
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