プロローグ

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薄暗くジメジメとした劣悪な環境の中…一人の女性が苦しそうに唸り声を上げていた… 「うっ…うう…」 長い間喚く声にイラつき看守が怒鳴り声をあげる! 「うるせぇぞ!静かにしないとまた叩くぞ!」 ガンッ!と牢屋の檻を蹴りつけると唾を吐いて他の牢屋の見回りへと向かった… 看守の足音が遠のくと… 「大丈夫か…」 女を心配する声が響く…しかしその問いに返事が帰ってくることは無かった… とある屋敷で神妙な面持ちで執事がその屋敷の主人に書面を読み上げる。 「本日、明朝にサンサギョウ収容所にて幽閉されていたメアリー囚人が死亡致しました」 机の書面に目を通していたこの屋敷の当主のジェイコブはそっと顔をあげると… 「あの娘…まだ生きていたのか」 驚いて執事のイーサンを凝視してしまう。 「はい、幽閉されて十ヶ月…といったところでしょうか」 顔色を変えずに返事をする。 「あの面汚しがようやくいなくなったか…まぁいいそれで他に報告は?」 「…ございません。お嬢様のご遺体はどうなさいますか?」 バンッ! ジェイコブは激しく机を叩き、イーサンを睨みつける。 「おの娘をお嬢様などと呼ぶな!あいつは勘当したもう我が家とはなんの関係もない」 「失礼致しました…ではご遺体の受け入れは辞退してよろしいでしょうか」 「受け入れも何も私が関わる事ではない、お前の方で上手く処理しておけ」 「はい」 イーサンは頭を下げると部屋を出ていった。 その夜イーサンは深くフードを被ると一人誰にも知られることなくサンサギョウ収容所を目指した。 シトシトと雨が降る中一人馬を走らせる、山深い森の中に不気味な要塞のような建物が姿をあらわした。 イーサンは裏手に回るとトントンと扉を叩く、程なくして扉に付いた小さい窓が開くと男の目だけが見えた。 「囚人番号49の遺体を回収したい」 それだけ言うと金の入った袋を窓に近づける。 男は受け取り中を確認すると… 「少し待て」 ガチャと窓を閉めた。 強くなる雨の中身動きせずにじっと待っていると扉が開き黒い袋を放り投げられる。 「ほらよ」 ドサッと目の前に投げ出されると、そっと抱きかかえる。 「軽いな…」 「まぁ飯もあんまり食わないしやせ細っていたからな…そういやそいつ子を産んだらしいがそれはどうする?」 思わぬ言葉につい顔をあげて男の顔を見る。 「えっ赤子を産んだのですか?それは…ここに入った時にはもう既に…」 「そんなの知らん、ここの奴らに孕まされたのか元からか…それで?」 どうするんだと言われると 「亡くなったのか…」 「いや、その時は生きてたのかな…その囚人が最後の力で産み落としたんだろうなその骸のそばで転がっていたらしい」 「その子はどうしてる!」 男の服を思わず掴むと 「何しやがる!離せ!知るかそのままほっといたらしいからもう死んでるかもな。遺体でいいなら連れてくるぞ…ただしこの倍はもらう」 男は袋を持ち上げるとニヤリと汚く笑う…口から見える歯は真っ黒で所々抜けていた… 「その倍だと…」 「嫌なら他の死体と共に燃やすだけだ」 男は袋に手を伸ばす、イーサンはサッと袋を自分の方に引き寄せると 「金は用意する…赤子の遺体は大切に保管しておいてくれ…」 イーサンがキッと男を睨みつけると 「ふーん…赤子の遺体をね。気持ち悪い野郎だな、何に使うんだそんなの遺体を…」 伺うようにイーサンを上から下までじっとと見つめる…男の不快な視線を避けるように深くフードを被り直すと 「いいから言うことを聞いておけ…金なら用意する」 怒りを顕に男を睨みつけると 「はいはい、まぁ俺は金さえ貰えれば文句は無いよ」 男は参ったとばかりに手を上げる。 「金を用意次第引き取りにくる…少し時間がかかると思うが必ず用意する」 男は軽く頷くと扉を閉めた。 イーサンはメアリーの遺体の入った袋を抱きしめると悔しそうに馬に乗せるとしっかりと抱き寄せて馬を走らせた…
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