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本気と遊びの境目
「裕太、昨日七菜ちゃんとご飯行ったんだって?」
「何で知ってるの?」
「さっき七菜ちゃんから聞いた」
「七菜ちゃんが? そうなんだぁ。アイツお喋りだなぁ」
大学の講義に向かう俺達は、長い長い階段を登りながら話をする。
「裕太、テンション低いけどもしかして昨日七菜ちゃんと何かあったのか?」
「酔ったついでに私と付き合ってって言われた。別に遊びならいいけど、俺には綾乃がいるから、付き合えないとは言ったけど」
「で、断ったんだよな?」
「キスをせがまれて、胸を揉まされた」
「えっ? それ大丈夫か?」
階段の中腹で賢斗の足が止まる。俺は構わず登り続ける。
「七菜ちゃんの胸、張りがあってデカかったよ。気持ち良かった」
「裕太お前は。そこは普通、断る所だろう」
賢斗は先に進む俺を追いかけながらそういった。
俺も負けじと正論を言ってみる
「酒の席だから、何でも許されるでしょ。
飲酒とベッドでの契約は無効だから。男なら喜ぶ所だろ」
「それは分かるけど。男としてダメだろう」
「まだ俺は綾乃と結婚してないし、一度くらいの浮気はセーフだろ」
「裕太さぁ、お前相変わらずバカだなぁ。浮気は初めてじゃないだろ? 綾乃ちゃんにフラれるぞ?」
「綾乃は俺のことを知らない」
「じゃぁオレが綾乃ちゃんに裕太の本性を言う」
俺はその言葉に足を止めた。
「賢斗はなんでそこまでして俺に構うんだよ。お互い好きな事してキャンパスライフ楽しもうぜ」
それだけ言うと賢斗を置いてスタスタと早足で講義室に向かった。
講義中、賢斗は隣の席で真面目に淡々と時間を過ごす。俺はその間、黙々と小説を書いていた。
相変わらずエロい表現過ぎてムラムラしっぱなし。さっきの気に入らないやり取りのせいか、小説の内容も上手く進まない。
しかも俺の精神状態はこのまま一日持つかどうかわからないほどエスカレートしてきている。
賢斗とは朝からギクシャクしているから、この欲求を相談することは出来ない。
俺は大学へ何をしに来ているのだろうか、本気で悩む時がある。
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