バイセクシュアル

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バイセクシュアル

「なぁ賢斗、今日泊めてくれ」 「急だな。いいよ」  スーパーで晩酌の買い物をしてから賢斗のアパートへ向かった。 「お邪魔しまーす」 「どうぞ」  いつものように玄関に靴を脱ぎ捨て、自分の部屋かのように乱入する。  1Kの部屋の中はというと、男の一人暮らしにしては意外と綺麗に片付いていて清潔感があった。 「賢斗、ゲームしようぜ」  とその前に、違和感を感じた。  もしやと思い洗面台を覗く。 「あったー!」  俺は思わずビンゴ的な感覚で叫んでしまった。 「歯ブラシ二本!」  そしてベッドに上がりぴょんぴょん跳ねてやった。 「うるさいから止めろよ、隣から苦情が来るだろ」 「お隣さんうるさいの?」 「まぁね、結構厳しいんだよ」 「じゃぁ、エッチするときもサイレント?」  賢斗が苦笑いをする。 「だよねぇ、ラブホテルとは違うからねぇ。  じゃぁ、賢斗は本当に童貞じゃなかったんだ!」 「裕太に会う前からオレは経験者だよ。本当にうるさいから静かにしろよ」 「ねぇねぇ、いつ女が出来たの? 俺の知ってる女の子? 紹介してよ」 「そのうちな」 「もぉ、もったいぶらないでよ。写真とかないの? 気になるぅ」  と室内をキョロキョロしてると見つけた。可愛いフレームに入った写真。  それに誘われるように近付くと思わず声が出た。 「あっ」 「あっ、それね」 「どっかで見たよこの女の人」 「大学の非常勤の助手」 「あっ、分かった。あの綺麗なお姉さんね?   え? もしかしてこの人が彼女?」 「そう」 「くわぁー、マジで? 先生と付き合ってたらダメでしょ」 「違うんだって、大学に移動になる前から付き合ってたからセーフだよ」 「はぁーん、そうなんだぁ。びっくり」  俺の知らない所で俺の知っている人と付き合っていたなんて、賢斗は何で教えてくれなかったのか。俺のヘソは少し曲がった。
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