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「なぁ、裕太」
「なによ」
「彼女バイなんだよ」
「は? 何かの病気か?」
「バイセクシュアル」
「あぁ、両党遣いね」
「それ聞いてどう思う?」
「何とも思わないけど」
俺はいつものようにゲームのスイッチを入れた。コントローラーを持ってやる気満々だ。
「早くやろうぜ」
賢斗はその場に立ったまま動かなかった。
「賢斗早く来いよ」
それでも賢斗動かなかった。
賢斗が何をそんなに悩んでいるのかが分からなかった。
「賢斗?」
「オレさぁ、複雑なんだよね。バイセクシュアルって呼ばれる彼女のこと。オレは男だし、男の俺だけを好きでいてもらいたい」
「うん」
「男で言ったらゲイってことじゃん。同性を抱くのはどうなんだろうって思っちゃうんだよね」
賢斗はテーブルのそばまで来ると肘をついて座った。
俺もテーブルに向きを変えて座り返した。
「だから頭ん中が混乱して複雑なんだよね。消化出来ないまま結構経ってて」
「賢斗が彼女のことをバイって知ってからどれくらい経つんだ?」
「一年くらい。付き合って三年になるけど、初めはテヘロだったんだよ。でも途中でバイになったって事は、オレが満足させてやれなかったのかなって思って。
それから彼女とはセックスが遠のいたって言うか、オレもイきづらくなっちゃって」
「ふぅん。俺の意見を述べていいか?」
「うん」
「まず、誰が誰を抱こうと関係なくね? 途中でバイセクシュアルになったからって、更にレズビアンに転向したからって人を抱くことの行為としてはどっちも変わんなくね?
例えばイチゴが好きだけど、練乳かけたら更に美味しくて練乳イチゴの虜になりました。
でもそれって練乳に恋したわけじゃないんだよ。練乳イチゴに恋したんだよ。
根本的な話、人間って男も女も同じ人間だから。そこから男と女に別れただけじゃん。
男に練乳をかけたのか、女に練乳をかけたのか。それはわかんないけどね」
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