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そうだ、今綾乃は何してるのかなぁ。
そぅ、綾乃は俺の彼女だ。付き合いだして半年を迎えようという所。お互いまだまだ知らないところがあり、初々しさも残るバカップルだ。
密閉空間に二人だけの時間が音楽と共に流れる。
俺は綾乃の笑った顔を横目で盗み見た。
その嫌みの無い笑顔は俺の目を離さない。
その視線に気付いたのだろうか、綾乃は俺をチラッと見ると顔を背けた。
「恥ずかしいからそんなに見ないでよ」
綾乃は俯きながらそう言った。
好きな子に見るなと言われたら余計に見たくなるのが男の心情だ。
俺はハンドルから手を離し、そっぽを向いた綾乃の頬に手を這わせた。火照った顔はきっと赤くなって恥ずかしがっているに違いない。
そんなことを感じ取ると何故だか無性に愛おしく感じ、居ても経ってもいられなくなった。
俺は綾乃の肩まで伸びた髪に手を潜らせながら頭を引き寄せた。そして親指で魔法を掛ける。
潤んだ唇をそっと撫でると少しだけ開いた。その隙間を俺の唇で塞ぎたい。
あと少し、綾乃とゼロ距離になる。
あぁ、綾乃に会いたくなってきた。
「綾ちゃん、今なにしてるの? 今から会いたい、いいよね?」
「今から? じゃぁ仕事終わったらね」
「やったぁ、綾ちゃんの部屋で待ってるね」
「まてまてまて、それはダメだよ。待ち伏せになっちゃうよ」
「ダメなの? ねえ綾ちゃんダメなの?」
「ダメです。裕太は私が仕事終わるまで待ってなさい。どうせ自分の部屋で昼寝してたんでしょ?」
「違うよぉ、でも早く会いたいから綾ちゃんの部屋で」
「ダメです!」
「わかった。自分の部屋で待ってる」
俺は綾乃が大好きなだけなのに。いつも一緒にいたいし、心配なだけなのに。
そんな俺のことをみんなは、犬系男子と言う。
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