犬系男子の素性

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犬系男子の素性

 今日は朝から大学へ行く日だ。早くから支度を始めて準備万端。気合いを入れて出発する。  本当は大学なんかには行きたくない。だからテンションだけでも上げようと気合いを入れてみる。が、いつも初めだけ。  途中でペースダウンして二進も三進も行かなくなって、気が付けば抜け殻になっている俺がいる。  今日はそんなペースダウンが早くも訪れた。  大学へ向かいながら車の中でしばし考える。  俺、最近綾乃とセックスしてない。どれくらいしてないんだろう。綾乃の体を忘れそうなくらいセックスしてない。  三日。  あぁ、綾乃の体に三日も触れてないのか?!  マジで辛すぎる、えっ、今から会いたいんだけどダメかなぁ。さすがに三日はヤバい、禁断症状が出る。  綾乃に、今から行くよって言おうかな。  絶対に、良いよって言ってくれるよ。  大丈夫、大丈夫。  が、しかし  講義に行かなくてはならないと言う現実を思い出した。  そして、綾乃は仕事中だという事も忘れていた。 「綾ちゃん」  思わず心の声が漏れた。  大学へ通う理由は、実家に入って家業を継ぐのが嫌だったから。  俺には老舗を継ぐなんてとても出来ない。しかもあの有名な和菓子屋なんて、無理だよムリ。  しかも長男ひとりっ子とか、絶対に跡継ぎ確定だよね。嫌と言えない俺の未来はリアリティが溢れているが華やかさは無い。  更には  逃げても四年だけ。  伸びても四年だけ。  それが俺の現実。  だから、この一生の内の四年間だけは大切にしたいと思っている。好きなことをして悔いの無いようにしたい、と大人びたことを言ってみる。  本当は一生学生でいたいよぉ。  老舗の跡継ぎなんて嫌だぁ。    ある意味学生生活は現実逃避の温床だ。ここでは自分の素性をさらけ出すことも必要ないし自由がある。それに恋愛映画の主人公になった気分でいられる、時もある。  そんな気楽な俺を見てなぜが女の子が寄ってくる。一緒にいる親友には誰一人と近付いてこないのに。  
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