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「最近七菜ちゃん見ないけどどうした? またどっかでストーカーしてねぇだろな」
「あぁ、七菜ちゃんなら夜中にカラオケ屋でバイトしてるの見たよ。カウンターの中でイチャイチャしてたから、アレが新しい男じゃないかな。裕太、離れられて良かったな」
「へぇ、そうなの。回りに迷惑掛けなきゃ良いんじゃね? 正当に付き合ってるなら応援するよ」
「応援するよだなんて、裕太は良い奴だなぁ」
「違うよ、応援しないとまた何かやらかすだろ?」
「そうか、そう言う意味ね」
いつもの中庭は心なしか忙しく歩いている人が多かった。
俺はその姿を目で追っていると、頭の中を現実の波が襲ってきてのまれそうになる。
何かが違う。自分は何かを隠しているのか、それとも事実を受け入れていないだけなのか。訳が分からない。
「裕太」
考え事が深すぎて賢斗の声が耳に入ってこない。
「おい裕太!」
「は?」
「は? じゃねぇよ。オレが呼んでるの気付かなかったのかよ」
「あぁ、ごめん」
「裕太おかしいぞ。大丈夫か?」
「そうね」
「会話にならないな、ダメだこりゃ。裕太焼き肉行こうぜ」
突然の誘いに訳も分からないまま腕を捕まれて歩き出した。
「つか、運転手は俺だよな?」
「そう、だから行くぞ」
「はい」
今日は尻に敷かれてるのは俺だった。
賢斗に連れてこられたのは大手チェーン店の焼き肉屋。午後オープンの開突だったので、他の客はチラホラいるだけだった。
座敷に通されると食べ放題の一番良いコースをオーダー。
「さぁ食べよう、先ずは乾杯だな」
「じゃぁ乾杯」
俺はオレンジジュースで賢斗は烏龍茶で、男だけの焼き肉で乾杯した。
「裕太は何が好き?」
「なんだろうな、タンは好きだな」
「じゃぁタンを5人前、牛カルビ5人前」
「いきなり5人前かよ」
「いいじゃん、食おうぜ」
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