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「俺さぁ。結局、本当の自分って何だろうなって」
「裕太はまだそんなこと言ってんのかよ」
「うん。もしかしたら嘘を演じていた方が楽だったんじゃないかなって」
「普通で良いんだよ。作家さんってね、人の感情だったり言葉の言い回しだったりを常に考えてるんだよ。だから本来の自分の表現が分からなくなるんだって。だから変わり者も多くて扱いづらいって前に綾乃ちゃんが言ってた」
「そうなんだ」
そんな話をしながら既に俺の頭の中では、今喋った会話をリピートして違う言い方に変換していた。
それに気付いた俺は、なんだか職業病みたいで嫌気がさした。
「もぉ、何だよ!」
「裕太どうした?」
そこから俺の熱弁が始まった。
「俺さぁ、こんなエロ小説書くつもり無かったわけ。普通の純愛やコメディを書きたかったんだよ。でも結局何が好まれるかってエロ小説なんだよ。数字が伸びるって分かったら、エロ小説を過激にしていくしかないじゃん。毎日せっせと小説書いて、自分の息子を宥めながら書くわけさ」
「自分の息子をな」
「そうだよ。息子が勃起したら収まりきかないだろ? 毎日精子が作られてても足りないよ」
「でも裕太、安心しろ。世の中には毎日オナニーしてる人がいる」
「俺は一日中小説と向き合うことだってある。だから毎日オナニーレベルじゃなくて、アホな絶倫だよ。最後の方は水だよ水」
賢斗は机を叩いて笑った。
「それはキツいわ」
「だろ? あの時は俺死にそうだったわ」
「マジでウケるわ」
「エロ動画見たりエロ漫画見て色々勉強するわけよ。でもさぁ、そこには画像として記録されてるだけで文字表現がゼロなわけ。そこで勃起して文字変換で勃起して、俺の息子は勃起したままの悪い子ちゃんなんだよ」
「裕太のドリンクは確かオレンジジュースだったよな? アルコールが入ってたのか?」
「酔ってねぇよ!」
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