新しい何か

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 ほうとう屋からしばらく車を走らせると、山の麓にある龍のいる寺に着いた。  まず目に飛び込んできたのはその大きな門。寺とは思えないほど大きい山門だ。近くに寄ってみると、その迫力に負けて開いた口が塞がらない。 「綾乃、口が開いたままだぞ」 「あっ、ごめん」  二人で山門をくぐり抜け、正面にある金堂へと近づく。 「大っきいね」 「そうね」  入り口で拝観料を納めてから中へ入る。人の足で擦れた床はワックスが掛かったように艶々になっていた。それだけ人の流れがあると言うこと。  本堂に入ると先ずは高い天井が俺達を出迎える。そして自然と天井に目が行く。 「えっ、凄い、何?」  綾乃は足が止まった。  その先には二匹の龍が天を舞う。 「綾乃、口!」 「あっ、ごめん」 「ここで手を叩くと響くんだよ。鳴き龍って言うんだ」  俺は床にある足形に合わせて立つと、大きく手を開いて叩いた。 「え、何? 響く」 「ここは日本一の龍の鳴き声って言われてて、吊り天井になってるから多重反響現象でエコーが掛かったみたいに聞こえるんだよ」 「確かに」  そう言って綾乃は俺と同じように手を叩いた。楽しかったのか何度も叩いた。 「綾乃、うるさいよ」 「あっ、ごめん」  次にその奥にある戒壇廻(かいだんまわ)りに入った。階段を降りて右に曲がるとかなりの暗闇。綾乃は自信満々でズンズンと歩いて行く。  ここは御本尊様の真下に、心という形をした真っ暗闇な通路があって、そこを進んで錠に触れると御本尊様とご縁が結ばれるというこの寺の名物がある。 「え、やだ、怖い。本当にまっ暗なんだけど」  俺は綾乃を先に行かせたまま進まなかった。それにすら気付かない綾乃はある意味男前だ。  しばらくすると助けを呼ぶ声が。 「裕太! 裕太どこ? 早く! 助けて、見えないよ!」 「そりゃ、元々暗いんだから見えないよね」 「だから早く!」 「全く、子鹿ちゃんかよ」 
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