自由な彼女

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*  指定された場所は新宿だった。  とあるファッションビルに入ると僕を待っていたのは、少し仏頂面の彼女だった。  僅かばかりの謝罪の後、僕は彼女の買い物につきあわされることになった。  とあるプロジェクトで通販WEBサイトを構築した際に、ここのファッションビル内のテナントで社割が有効となるカードを作ってもらった。これがあれば会計時に相当な割引がきく。彼女は僕に会うというより、カードに会いたかったんだと思う。  その後、僕は同じフロアを行ったり来たりと二時間も歩き回らされた。「さっきのがよかったかな」、「もう一回見たい」などと言われ、なかなか買うものも決まらないまま僕は残り少ない体力を更に削られた。 「もうどこかで待ってるからさ、美優が好きな服買ってきたら?」  と僕は彼女にカードを差し出した。すると、僕を待っていた時の仏頂面よりも機嫌が悪そうな顔になり、 「一緒に見てくれないと意味がないでしょ!」  となぜだか僕が怒られてしまった。  それから更にフロアを何往復かした末に、購入する服と靴が決まった。  会計時に僕がカードを出すと担当してくれた店員さんが「お優しいですね」と言ってくれた。何が優しいのか僕にはもうわからなかったけれど「どうも」と愛想笑いを返してみた。
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