晩夏の挽歌 ──酒は孤独を呼ぶ毒──

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 後日、帰り道の電車の中で元は、近くで自殺があったというニュースを見つけた。  あのヘラヘラとした笑いを思い出す。  駅を出てから立ち止まり、あのバーに行ってみようか店を見上げた。  だが、この前の歌が聞こえてきて、元はそちらに足を向けた。  周りには誰もおらず、歌もちょうど今終わった、 「すみません、その曲、なんてタイトルなんですか? 素敵な曲だなって思って」 「ありがとうございます。挽歌、です。葬送の歌」 「挽歌」 「ええ。この曲だけは、歌詞の付けられない歌なんです。つけたくない、ていうのが、正しいですかね」 「なるほど。ありがとうございます。図々しい話だけど、もう一度、聞かせてもらうことはできます?」 「ええ。喜んで」  彼女は微笑んで、キーボードの上で指を躍らせる。  優しくて悲しい歌声が、夜空に向かって飛んでいく。  気づいた時には、元の頬を、涙が下りていた。  今日は、酒を飲もう。  指で涙を拭きとって、元は笑った。                     了
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