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突然消えた娘が翌朝玄関先で倒れており心臓が止まりかけた、と両親に叱られ酷く心配された。
地面に突っ伏す私の周りにはカラスの羽が大量に落ちており不気味だったらしい。
「私、どうしても結婚しなきゃ駄目なのかしら。九重家って今評判悪いじゃない」
布団に横たわる私にお茶とお菓子を持ってきてくれた母に問いかける。
「それが嫌で飛び出したの?」
「まあ、」
母も親の言いなりで伊神家に嫁ぐ事になったが、共に暮らしていくうちにお互い惚れ込んだらしい。娘の私から見てもとても仲が良く愛を感じる。
そんな母だから、医者になるだの好きな人と結婚するだの、夢物語は馬鹿馬鹿しいと感じるタイプだった。
「あのね、家から九重家に声をかけたわけじゃないのよ。やっぱり無理でしたなんて今更言えないわ、貴方の他に差し出せる女の子はいないし」
「そんな貢物のように言わないでよ」
「貴方がお使いに行っている時に、九重家ご当主が直々にお見えになってね。知らないでしょうこの話」
突然爆弾を落とす母に勢い良く返事をする。
「知らないわ!そんな話一度もしなかったじゃない」
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