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「すごく美人できれいな髪をしていてね。正直貴方を嫁に行かせて良いものかと思ったわ。彼、その時凄く深く頭を下げてね。許しが出るまで通いますとか言い出すの」
「なにそれ」
「昔助けていただいた時からお慕いしておりました、って言ってたわ。貴方、記憶にないの?」
ふと、昨日の天狗男に同じように言われたことを思い出した。
「全然覚えてない。他に何か言っていなかった?」
「大雨が振り始めたが傘もなく軒下で雨宿りしていたのだが、彼女が僕を抱えて家に送ってくれたって言ってたわ」
「記憶にないほど昔の私、男の子を抱えるなんてどんな腕力してるのよ」
そんな出来事があったら覚えているだろうに。そう思いながら記憶を辿るがそれらしい出来事はまったく思い出せない。
「あんな熱のこもった目をしている方久しぶりに見てお母さんわくわくしちゃったわ。全く知らない方というわけではなさそうだし、九重家、いいと思うわよ?」
「失礼致します。奥様、寧々様、九重家のご当主がお見えです」
すっと女中が襖を開ける。
心が決まらぬうちにとうとう対面する事になってしまった。昨日の今日で進展が早すぎる。
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