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四月
キーンコーンカーンコーン♩
「それでは今日はここまで
田塚さん、ちょっとこの後いい?」
授業が終わり先生から個別に呼び出される
それは突然だった
私はスタイリストを目指す専門学生
田塚 藍 19歳
昔から洋服が大好きで将来はファション関係の
仕事がしたいと今の学校に通っている
その学校は年に1回ある
全国スタイリストコレクションの大会を
推奨している学校の一つで
そこに通う生徒のほとんどは、
その大会に向けて日々努力を重ねていた
私は1か月前に行われたその大会に初めて出場し
頭からつま先までのスタイリスト総合の部で
見事優勝したのだ
何が突然かというと
美容大国でもある韓国に半年間
留学しないかと先生に提案されたのだ
その大会での私のパフォーマンスに
未来を感じたという現役のスタイリストが
私を指名してきたそうだ
学校としても名誉のあることなので
費用は全て学校が負担するので
できれば行って欲しいとお願いされた
私としては学生時代に現場を体験できるなんて
夢のようで喜んで受けたかったが
一つだけ素直に喜べない理由があった
うちの両親は海外を飛び回る仕事をしている
私も小さな時は両親について行き
いろいろな国を転々としていたが
中学3年の時から私は両親に着いていかず、
日本の祖母の家で暮らすようになった
素直に喜べない理由とは最近祖母の調子が
あまりよくないので出来れば側にいたかった
学校には少し考えさせてほしいとお願いして
時間をもらった
その日の授業が終わり帰宅する
「藍ちゃんおかえり」
今日は調子がいいのか玄関までお出迎えしてくれた
その横を愛犬のオコメが見守るようについてくる
「おばあちゃん起きてて大丈夫なの?」
「今日は天気がいいからか調子がよくてね」
オコメの頭を撫でながら
いつもより顔色がいいおばあちゃんが笑いかける
「ならよかった」
祖母は一年程まえに大腸に癌が見つかり
手術のため何ヶ月か入院していた
完治に向けて頑張っていたが最近また
肺に転移が見つかり治療中である
そんな祖母を一人残して半年間も韓国へなんて
やっぱり無理だと思い留学の話は断ろうと思っていた
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