六月

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そのフロアーにひとつしかない部屋のベルを鳴らす 「はーーい」 中からレインシエルのメンバーのチェウォンが 出てきた 「藍ちゃんいらっしゃーい!入ってー」 気さくに言われ中へ入ると 20人くらいの人がワイワイとお酒を飲んで 楽しそうにしていた よく見るとスタジオで撮影に来ていたであろう アイドルグループの人も何人かいた 「藍ちゃん、はいこれ」 美波ちゃんがグラスに入ったジュースをくれる 「ありがとう」 「藍ちゃんって私が転校した後 すぐに引っ越ししたの?」 「そうなの、半年もしないくらいかな? 親がアメリカに転勤になって」 「いいなぁー!いろいろな国に住めて」 美波ちゃんは羨ましがるけど、そんなに良いものでも なかった おかげで昔から仲の良い友達とかも出来ず 語学も中途半端だし 「美波ちゃんの方がよっぽどすごいよ 韓国のアイドルなんて、なろうと思って なれるものじゃないもん」 「まぁそりゃ大変だったよ でも絶対諦めたくなくて頑張った」 誇らしげに話す美波ちゃんがかっこよく見えた しばらく美波ちゃんと話をしていると 「ミナ?」 楽しそうにみんなとお酒を飲んでいた 男性アイドルの一人が話しかけてきた 確かブルークロスのハオンだ いろいろなアイドルのジャケット撮影が続く中 ジウがブルークロスも来ないかなと 毎日呪文のように言っていて 私がそのグループ知らないと言ったら あんなにかっこいいのに知らないの?と ビックリされて絶対覚えた方がいいと メンバーの写真を見せられていた 「ハオン、久しぶり」 美波ちゃんがフレンドリーに話し出す 韓国でデビューしただけあって 韓国語上手だなと思いながら横で聞いていると 「この子が噂の子?」 私、噂になってるの?なんで? 不思議に思い美波ちゃんの方を見ると 笑いながら私にだけ聞こえるように 「なんか千鶴さんのスタジオで撮影した人が 日本人の可愛い子がいたって芸能界で 広めてるみたいで、、、 韓国の男の子って日本人の女の子が 優しくて可愛いとか好きな人多いのよ」 日本語で話す 「そうなの?」 「私なんてこう見えてモテモテよ」 髪をかき分けながらウインクする 日本語での会話だから周りの人達には 分からなかったようだった 「ハオン、私ジホとちょっと話したいことあって 藍ちゃんのことよろしく」 「え?おいっ!ミナ?」 ハオンの声は聞こえてないのか ミナはハオン達と同じグループの ジホと言う人のところに行ってしまった ど、どうしよう、、、 いきなり一般人の相手困るよね 申し訳なさから帰ろうかなと思っていると 「ねぇ藍ちゃんって 千鶴さんのスタジオのアシさんなの?」 ハオンが話しかけてきた 「いえ、留学中であのスタジオで勉強させて もらってます」 「え?留学生なの?」 ハオンが見知らぬ日本人と話をしているので 気になったのか同じグループのドユンやユノも 近寄ってきた 「ハオン、この子誰?」 「千鶴さんところのスタジオのアシさん、 ではなかった留学生?」 「あーあの噂の!」 ユノが興味津々に私を見る 「日本から来たんだ?」 ドユンに聞かれる 「はっはい」 イケメン達に囲まれて緊張したのか 身体が熱くフラフラしてきた 「何歳?」 ユノが聞いてくる 「19歳です」 「え?でもこれお酒?いいの?」 私の持ってるグラスを見て ハオンが心配そうに顔を覗く 「え?これジュースって美波ちゃんが」 「美波ちゃん?って」 あーそうかここではミナなんだ 「えっとえっと」 話したいのに呂律も頭もうまく回らない 「大丈夫?」 ユノがふらつく体を支えてくれる どうしよう、お酒飲んじゃったの? 美波ちゃんがくれたから ジュースだと思い込んじゃった もしかして美波ちゃんはもう20歳なのかな? 回らない頭で余計なことばかり考える 「藍ちゃん?」 ハオン達の声が遠くに聞こえてきて フアフアして気持ち良くなってきた 瞼が重くなってきて もうそこからの記憶はなくなった
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