ラウルとチッカ遅れ来る

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“今回国際児童文学賞を受賞したラウル氏のコメント:大変素晴らしい賞を頂き光栄です。賞金で世界中を旅したいです。特に、日本を是非とも訪れたいです。”  続けてコメンテーターの言葉も載っていた。 “ラウル氏は大変な親日家のようで、日本への入国を長く切望していたようです。鎖国体制に入って久しい日本ですが、政府は今回著名な賞を受賞したラウル氏を温かく歓迎するとのことです。”  なんだかいろんな意味で遠くに行ってしまったな、と彼の作品を読んで思った。その物語は、北欧神話の神々と日本神話の神々が仲良く協力し合い、人間たちに知恵を授けて自然と愛を守っていくというストーリーだった。なんだ、やっぱり神様好きじゃん。でも信仰って複雑なのかもね。  私はYUMEURUWASHI(ユメウルワシ)のドリームメッセージ機能を使って、彼への伝言を残した。今彼は忙しすぎて、夢なんて観る暇はないだろうけど。私は渾身の力を込めて、大きな声を贈る。 「オンネア! ラウル!」  ラウル、ほんとうにおめでとう。君はもう、夢を観なくても済むね。私あなたの夢をいっしょに観させてもらえて、幸せだった。もう十分。そう、もう夢は十分。
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