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“先ほど、ラウル氏が来日しました。多くのファンが横田基地の周辺に詰めかけております。”
画面上に映るラウルは、見た目はほとんど夢の中の彼と変わらなかったけれど、やっぱり別次元へ旅した旅人のような表情になっていた。もう今の彼は、私との約束なんか覚えていないだろうな。
“今後のラウル氏のご予定はいかがですか?”
記者に質問されたラウルは、以前よりも流暢になった日本語でこう返していた。
“おすし屋で、ウニを食べたいです。ウニのグンカン。あとおみくじを。”
ラウル、やっぱりウニ食べたかったか。
“おみくじを神社で引くのですか?”
ラウル、君は引けないじゃん。
“いや私自身は宗教の関係で引けないので、あの人に引いてもらわないと。”
ラウル。
“あの人とは誰ですか? 意味深ですね。”
“あの人は待ち人ですね。”
ラウルったら。
“おうや、より意味深な言葉になりましたよ。”
もう、行かなきゃまた恥ずかしい思いしちゃうじゃない。しょうがないな。
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